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<ソウルの空>

ソウルに来て早一月が経った。この間気になっていたことがあった。空である。朝起きて外を見る。晴れている。しかし、何か暗い。雲がかかっているのだろう、いや大都会ゆえのスモッグなのかもしれない。そう思い道路を見やると確かに引っ切り無しに自動車が走っている。気分が晴れない街だなあ、東京でも青空があったのに。そう思いながら過ごしていたが、ある日原因が黄砂だと知らされた。正直、たかが砂だと軽んじていたが、どうやら今年は軽いらしい。冬に中国で大雪が降ったことが飛散を抑制させたということである。昨年は相当ひどく、雨でも見える視界が黄砂で見えなかったということである。この黄砂、春先に中国から飛んでくるのだが、韓国はその通り道で、避けることは出来ない。その被害も大きく、人体には花粉症と同等の影響を及ぼすそうだ。砂の中には様々な要素が混在しており、ウイルスの一種も入っているとも言われている。しかも、粒子が細かく、ちょっとした隙間ならどこにでも入ってくる。アパートの窓などとても開けていられないくらいだ。もうじき、黄砂の季節も終わり、青空が見え始めるらしい。

<韓国は肩書き社会>

生活用品を購入しにスーパーに行った。ジュース、ティッシュ、ノートブック、どれもこれも日本サイズより一回り大きい。Lサイズといったところか。もちろん普通サイズもある。大は小を兼ねるというか、体裁を気にする韓国人ならではというところか。この体裁はいろんな場所に現れている。例えば、序列。韓国人はとにかく、序列が好きだ。初対面の人に年齢を聞くことは勿論のこと、韓国の新聞等には、「韓国の○○○、世界で第○位」というのがよく見られる。特に、日本との比較が好きだ。直接関係なさそうな内容でも、日本は何位と一応記している。仕事でもこの序列は付き纏う。韓国は肩書き社会である。肩書きがないと仕事にならないとといってもよい。なぜなら、ある肩書きの人はそれ同等以上の人としか会わないからである。例えば、相手が部長であれば、それ以下の人には会わないどころか、こちらから会いに行っても会ってくれるかどうか保証はない。目上の者が絶対である儒教精神が培われているということか。

また、世に知られている韓国の教育熱。昔、中国の科挙と同じ制度があった。両斑(ヤンバン)である。人々は両斑になるために猛勉強をしたということである。現在の教育熱はこの名残ともいえるのではないだろうか。

しかし、こうした韓国の文化ともいうべき物の思考は、残念ながらはたから見ると井の中の蛙といえなくもない。韓国では小さい頃から塾に通い、いい大学に入って一流企業に勤める。これが親子ともに描く最良の姿である。一方で、職人の地位は非常に低い。伝統工芸職人や高度な技術を持つ者であっても社会的な地位は低い。肉体的な労働は敬遠されるらしい。最近は一部大企業に反発し、企業家も多数現れているが、まだ根付いていない。一昔前の日本に似ているが、職人が尊敬の念を抱かれている分、日本の方がはるかにましである。韓国では一生懸命勉強し、一流企業に入ってそれで終わりなのである。その一流企業も中に入れば縦社会である。従って、下のものが上になることは屈辱に近いものとなる。画一的な立身出世しかないといえば言い過ぎかもしれないが、それに近い社会である。これは、韓国の地理的立地条件も影響しているといえよう。上は38度線で北朝鮮と国境を阻まれ、中国とは黄海を隔て、日本との間には東海(日本海)がある。これが内国重視で育ってきた韓国の姿なのだろう。一致団結したパワーの要因もここにあるのかもしれない。

<車優先社会>

とにかくソウルの道路状況はひどい。道路というよりは、車がひどい。運転の荒さはもとより、マナーが悪い。世界で一番交通事故の多い国というのもうなずける。道路を渡るときはたとえそれが小さな道であっても、必ず立ち止まり左右確認をしなければ身が危うい。気づいたら20センチ横に車がいたなんてことは日常茶飯事である。隙を見て渡るという感じである。まさに自己防衛。歩行者優先などという考え方は、恐らくドライバーには微塵もないであろう。しかも、自家用車、タクシー、バスの順に運転が荒くなるのだから困ったものである。公的機関のバスが一番ひどいのだから問題だ。乗客の安全優先などという考えは微塵もない。急発進、急停車あたりまえである。ところどころ、軽いものではあるが、乗用車とバスの衝突を見かける。何をそんなに急ぐ必要があるのかと言いたくもなる。短期間で経済先進国(OECD加盟)になったようにスピードを追求する国民性なのだろうか。ただ、バスが荒いのも理由がある。運転手の賃金は非常に安い。しかも、10時間労働の激務である。少しでも早く目的地に着き、ちょっとでも休みたいという本音があるらしい。しかし、バスは庶民が愛用する庶民のための乗り物であるため、運賃値上げは難しいという。社会・労働環境が見直されなければ、車優先社会は続くであろう。

ソウル通信

橋本 公和